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おまえがくれたもの [散文]

最初あいつを見た時は怖くて腰が抜けた

見たこともない格好で突然テレパシーのように

頭の中に声が響いた


誰だってそうだろう


そしてあいつの話した事はにわかに信じられない内容だった

碁を打ちたいそれだけの事で成仏できずに彷徨ってるなんて

その頃は理解できるわけもなく所詮他人事でしかなかった

偽りの楽しさにかまけながら暮らしていた

何かをしようとか何になりたいとか

そんな事どうでもよかった


何もなかった俺におまえは沢山のものをくれた

生きる楽しさを

自分への歯がゆさを

誰かを大切に思う心を


碁だけじゃなく人生そのものを教えてくれた


俺は永遠なんてあり得ないと思いながら

勝手にこのままおまえと一緒にいたいと思った


おまえは俺に全部くれたから消えてしまったのか?

なら俺は空っぽのままでよかった

一度は手にした大切なものを失うくらいなら

はじめから欲しくない!


おまえは俺の半分を持っていった

それはおまえの本意ではなかったかもしれない

持って行くなら全部持っていけ!

こんなの苦しいだけだ


触れられないものに手探りして

聞こえないおまえの声を聞こうとする

無意味だと知っていながら

そうしないでいられない


俺の全部やってもいい!

だからもう一度会いたいんだ


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