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たとえ現実がどれほど残酷だとしても・・・(1) [長編]

どこにいるのですか?

私の声を届く人は。

私はどれだけ待てば良いのでしょうか。

はるか昔に命の火は燃え尽きたというのに

肉体は朽ちることもなく

心は消滅しないまま

生きていた時と何ら変わらない。

それなのに目を開くこともできず

起き上がることも出来ない。

神よ、何故このように生殺しのようになさるのですか?

自ら命を絶った私の贖罪なのですか?






「うわぁ!」

ヒカルは覚えていないが心が苦しくなる夢で

飛び起きた。

額からは冷や汗が流れ肌着は嫌な汗で湿った。


「・・・・なんなんだよ!わけわかんねえ」

ここ数日、同じように目を覚ます。

軽い吐き気と頭痛。

それよりも心が壊れそうなくらい悲しさ

いや、虚しさで涙が零れる。


「ああ!みっともねえ!!」

男が泣くなんて格好が悪い。


下に降りていくと母親の美津子が心配そうに声をかける。

「ヒカル、あんた顔色悪いけど大丈夫?」

「ちょっと夢見が悪かっただけだよ」

面倒そうに答えた。

「夢?怖い夢でも見たの?」

「ガキじゃあるまいし、そんなわけないじゃん」

「だったらどんな?」

朝食のトーストをテーブルの置きながら続けて聞いてくる。

適当に答えればよかったなとヒカルは思った。

親がとやかく口を出してくるのがうるさく感じる年ごろだ。

「もう俺学校に行くから」

「えっ!?まだトーストだけでしょう?」


「今日、朝礼だから早くいかないとダメなんだよ」

嘘をついた。

ヒカルは家を出るとため息をついた。


「なんでいちいち聞いてくるんだよ」









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