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望む事(ヒカル) [散文]

もし、神様が現れてひとつだけ願いを叶えてくれると

言ったら俺は何を願うだろう?



ヒカルは今年も巡ってきた五月五日をかみ締めるように

目を閉じた。




あいつと別れて俺はもう一度俺の目の前に現れて欲しいと

願い続けた。

それしか望まない。

それで何かを無くしたとしても後悔しないと思っていた。



あれから十数年が過ぎた。


心のどこかで分かっているんだ。

もうあいつが現れる事はないと。

それでも意地になってる自分が居る。



ヒカル・・・・


優しくて透き通る声が薄れていく。

気高くて美しいおまえの姿が霞んでいく。


おまえと居た年月が消えてしまう事を恐れている。

その反面、楽になりたい俺が居る。



俺の人生が終える日がおまえの消えた五月五日であれば

嬉しいよ。

そうすれば俺たちはもう離れる事はないだろうから。






おまえがくれたもの [散文]

最初あいつを見た時は怖くて腰が抜けた

見たこともない格好で突然テレパシーのように

頭の中に声が響いた


誰だってそうだろう


そしてあいつの話した事はにわかに信じられない内容だった

碁を打ちたいそれだけの事で成仏できずに彷徨ってるなんて

その頃は理解できるわけもなく所詮他人事でしかなかった

偽りの楽しさにかまけながら暮らしていた

何かをしようとか何になりたいとか

そんな事どうでもよかった


何もなかった俺におまえは沢山のものをくれた

生きる楽しさを

自分への歯がゆさを

誰かを大切に思う心を


碁だけじゃなく人生そのものを教えてくれた


俺は永遠なんてあり得ないと思いながら

勝手にこのままおまえと一緒にいたいと思った


おまえは俺に全部くれたから消えてしまったのか?

なら俺は空っぽのままでよかった

一度は手にした大切なものを失うくらいなら

はじめから欲しくない!


おまえは俺の半分を持っていった

それはおまえの本意ではなかったかもしれない

持って行くなら全部持っていけ!

こんなの苦しいだけだ


触れられないものに手探りして

聞こえないおまえの声を聞こうとする

無意味だと知っていながら

そうしないでいられない


俺の全部やってもいい!

だからもう一度会いたいんだ


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