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望む事(ヒカル) [散文]

もし、神様が現れてひとつだけ願いを叶えてくれると

言ったら俺は何を願うだろう?



ヒカルは今年も巡ってきた五月五日をかみ締めるように

目を閉じた。




あいつと別れて俺はもう一度俺の目の前に現れて欲しいと

願い続けた。

それしか望まない。

それで何かを無くしたとしても後悔しないと思っていた。



あれから十数年が過ぎた。


心のどこかで分かっているんだ。

もうあいつが現れる事はないと。

それでも意地になってる自分が居る。



ヒカル・・・・


優しくて透き通る声が薄れていく。

気高くて美しいおまえの姿が霞んでいく。


おまえと居た年月が消えてしまう事を恐れている。

その反面、楽になりたい俺が居る。



俺の人生が終える日がおまえの消えた五月五日であれば

嬉しいよ。

そうすれば俺たちはもう離れる事はないだろうから。






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