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V.D(2) [短編]

「今年もですか・・・・」

事務局の一人がうんざりしたように言った。

「もう大丈夫だろうと思っていたんですけどね」

相手の男も呆れたように言った。

続々と積み上げられていくダンボール箱に二人は

大きなため息を落とした。


毎年、送られていたチョコレートはアキラが結婚を発表した事により

激減するだろうと考えていた。

しかし予想に反し去年より増えている。

そして今年に限り大きく変化した事がある。

アキラとヒカルに送ってきた主が男性からのものが倍増した。

加えて言えばヒカル宛ての物の送り主が男性が半数近い。


「進藤棋士は男性にもてますね」

「ええ。塔矢三冠は女性からの方が多いですがね」

二人のやり取りを聞いていたアキラが声をかけた。

「今年もご迷惑をおかけしているようで申し訳ない」

「とんでもない!」

「そうですよ。これも仕事のうちですから」

二人とも取り繕うように慌てて言った。

「・・・・ところで今聞いていたら進藤に送ってきた相手が

男性が多いとか」

「ええ。半数以上・・・」

それを聞いた途端、アキラの表情が激変した。

まさに鬼の形相になった。

「塔矢三冠・・・?」


「・・・・ボクが進藤の分も持って帰ります!」

アキラは何かを必死に堪えているようだった。

だが出来る限り穏やかな表情をしようとするが

少し引き攣った顔で笑った。


「ですが凄い量ですよ」

「大丈夫です!!」

そう言うとアキラは自分の分ではなくヒカルの分を

自分の車に運んだ。

その様子を事務員は呆気に取られてただ見ていた。


冗談じゃない!!

進藤に男からチョコなんて・・・。。

きっとメッセージ入りもあるに違いない。

アキラは帰る途中、何度かヒカル宛のチョコを川に投棄しようと

考えたが何とか止まった。


しばらくヒカルにチョコの事を伝えずにアキラはクロゼットの奥に

押し込んだままだった。






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