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お墓参り [短編]

「つき合わせて悪いな」

アキラは水桶を持ちながら言った。

「いや、俺達結婚したんだし」

ヒカルは墓花を抱えながら少し照れ臭そうに言った。

「それはそうだが・・・」

「おまえん家の墓はやっぱりハンパないな」

墓の中でもひときわ目立つ大きな墓石を見ながら

ヒカルはやっぱりと納得した。

「最近はあまり来れないからご先祖様に申し訳ない。

父が向こう(中国)に言ってからボクがやらなきゃいけないんだけど」

「棋戦で忙しくてろくに休みもないし仕方ないさ。俺だって両親に

任せぱなしだ」


「ボクらは将来どうする?自分達だけのお墓を立てる?」

「・・・・そんな事まだまだ先の話じゃないか」

ヒカルは少しドキッとしながらそれを出さないように

注意しながら言った。

「そうは思うが・・・・」

「言っちゃ悪いが墓はいつか墓守が居なくなったら

無縁になっちまうけど形は無くなるけど心は結ばれてるから

俺はそれでいいと思う」

「ボクはそれでも形を残したいんだよ。キミと歩いた証が」

おまえは知らない、

俺がいずれ居なくなる事を。

「でもさ、俺達は子供が居ないから二人とも居なくなったら

誰も来てくれないだろうな。二人ともひとりっこだしな」

「キミは子供が欲しいのか?」

「・・・いや、居ても構ってやれないだろうし。おまえの子供なら

見たいけど」

「キミが産むわけにもいかないし、ましてボクが産むのも無理だね」

アキラは小さく笑った。

同性で子供は望めない。

手段がないわけではないが。


ヒカルの頭に不意に浮かんだのは

佐為に身内が居なかっただろうかという事だ。

もしかしたら母親が違う兄弟が居たかもしれない。

もっと聞いておけばよかった。

それともうひとつ佐為が言っていた事を思い出した。

『あながち私達は繋がっているかもしれませんよ。ヒカルの姓の進藤の藤は

藤原の藤なんですから』


一ミリでもいい!

おまえと繋がっているのなら。


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