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ANOTHER STORY(45) [長編]

最初から大人向けです。

大人向けの内容です


ANOTHER STORY(44) [長編]

ヒカルは反射的にアキラの体を押しのけようとした。


怖い・・・・。


自分が分からない。

アキラに対して感じているのか

覚えている感覚なのか分からない。


「まさか、怖いのか?」

アキラは不思議そうに聞いた。

「そんなわけねえだろう」

そう言いながらも体が強張ってる。


「ボクはキミを傷つけたいわけじゃない。

ただキミを感じたいしボクを感じて欲しい」





大人向けの内容です


ANOTHER STORY(43) [長編]

応えられない・・・・。

自分の気持ちが分からない。



いや、違う!俺は多分おまえが好きなんだ。

でもおまえに俺の気持ちを伝えるわけにはいかないんだ。

あいつの思いを果たさなければならないから。


色んな思いがわき上がってきて涙が零れてきた。


「そんなにボクに触れられるのが嫌なのか?」

アキラはヒカルの涙に気付いて動きを止めた。


「・・・・・・・」

肯定も否定もできない。


「どうして!?」

アキラは涙を溜めながら叫んだ。

「塔矢・・・・」

「こんなに好きなのに・・・・!ボクはキミだけなのに!!」


俺はおまえに想いを伝える事は出来ない。


「俺はずっと想っている人がいる」


「その人のためなら誰とでも寝れるのか?」

「そうだ」


「・・・・・・分かった。キミがその気ならボクは好きにさせてもらう。

どうせキミにとってたいした事じゃないんだろうから」

アキラはヒカルの気持ちを求める事を諦めた。

それでも昂ぶった思いは抑えることは出来なかった。

意味の持たない行為であっても

自分には重要だった。

体を重ねたい。

無駄であってもそこから何かが変わってほしい。

そんな思いを捨てれなかった。





大人向けの内容です


ANOTHER STORY(42) [長編]

アキラは静かに障子を開けた。

そこには布団が敷かれていた。

ヒカルは思わず赤くなる。


「そのつもりで来たんだろう?」

「・・・・・・」

確かにそういう事は初めてではない。

だが相手がアキラである事がヒカルの体を強張らせる。

立ち尽くしているヒカルの左手首を持って自分の方に引き寄せる。

思ってた以上に力は強い。

背はアキラの方が少しだけ高いのでヒカルが見上げる状況になる。

こんなにまじまじとアキラの顔を見た事がなかった。

綺麗な顔だ。

俺なんか相手にしなくてもいくらでもいるだろうに。

ヒカルはそんな事を思いながら

アキラを見ていた。


「ずっとキミが欲しかった。緒方さんと関係を持ったと

知ってもその気持ちは変わらなかった」

「塔矢・・・・」

「ボクは卑怯だ。それは分かってる。それでもボクはキミを

手に入れたい」



大人向けの内容です


ANOTHER STORY(41) [長編]

もうすぐ塔矢が言っていた一週間がやってくる。

あいつも親父と同じで強情だから気が変わることはないだろう。


あいつと寝るなんて考えられない・・・・。

俺が本音を漏らさなければ

いや、その前にあいつと距離をおいておけばよかったんだ。


初めてでもないからたいした事じゃない。

そう思うのに怖さが先にたってしまう。

何故だろう?

自分が分からない。


確かな事はあいつに碁を捨てさせる訳にはいかないという事だ。



「決心してくれた?」

すれ違うざまにアキラはヒカルの耳元で囁いた。

「・・・・・・」

やっぱり諦めていない。

ヒカルは思わず振り向く。

アキラは上辺だけの笑みを浮かべる。

「約束忘れてないよね?」

「どうしても気が変わらないんだな?」

「ああ。絶対変わらない。変えられるのはキミだけだ」


「・・・・・分かった。明日、手合いが終わったらおまえの家に行くよ」

「うん。明日は手空きだから家で待ってるよ」

その声は嬉しそうでもなく苛立っているようでもなく

なんだか棒読みのセリフのようだった。


とにかくもう一度説得してみよう。

ヒカルはそう考えた。


ー翌日の夜ー

ヒカルの心は当然だが重かった。

対局に響かないよう無心を心がけてなんとか

勝つ事ができたのは幸いだった。

アキラはリーグ入りしているから丁度手空きだったようだ。


「相変わらず、でかい家だな」

本格日本建築の屋敷に来たのは初めてではない。

以前、アキラに用があって家の前まで来たが

結局そのまま帰った事があった。

インターホンをゆっくりと押す。


すぐに引き戸が開いてアキラが立っていた。


「ちゃんと来てくれたんだな」

「ああ、約束だからな」


「今、両親は不在だ。どうぞ」

ヒカルはまずいという顔をしたが

仕方なく靴を脱いで整えてアキラの後ろについて歩く。


「もう一度だけ俺の話を聞いてくれないか?」

「この期に及んで?」

アキラは少し不機嫌な顔をした。


「分かった。だったらひとつだけ約束をしてくれ。

俺たちの事は秘密にして欲しい」

「・・・・・・・」

アキラはヒカルの顔をじっと見た。

「おまえの言うとおりにしてやるんだから

それくらい聞いてくれてもいいだろう?」

「いいよ。約束する。キミがボクのものになってくれるなら」








ANOTHER STORY(40) [長編]

「進藤くん、何かあったのかい?」

ヒカルが気づかないうちに

白川が心配そうに覗き込んでいた。

「ううん。ちょっとぼーっとしてただけだよ」

先生に塔矢の事なんか相談できない・・・。


「それならいいけど何か気がかりな事があるなら

相談くらいならのるよ」

「うん。ありがとう。本当に少し寝不足なだけだから」

ヒカルは誤魔化すように笑った。

白川はかんぐるようにじっとヒカルを見た。


「何?」

「君はなんでも一人で背負うとするところがあるからね」

「・・・・、先生は心配しすぎだよ」

顔に出るなんて俺もまだまだ甘いな。

「それより早く片付けてメシでも食いに行こうよ」

「君が誘ってくれるなんて珍しいね。もちろん行くよ」

片付けもほどほどに

囲碁教室のドアに鍵をかけると白川はヒカルを助手席に乗せて走り出した。


「進藤くんは何がいい?」

「う~ん。ステーキも食べたいし、居酒屋っていうのも捨てがたいな」

「おいおい、君はまだ未成年だろう?」

白川は笑いながら言った。

「でもさ、一応社会に出てるわけだし」

「確かに少し前なら世間はそうはうるさくはなかったけど

今は飲ませた方が捕まってしまうよ」

「でも居酒屋でウーロン茶なんてさ」

「僕としては君を酔わせてみたけどね」

冗談とも本気とも取れない言い方にヒカルは戸惑った。

その様子に白川は笑いをこらえきれずに吹き出した。

「冗談だよ!前にも言ったけど僕は君に手を出す気はないから」


貴方を好きになれたらよかったよ。

本当に心の底からそう思う。

今度生まれ変わったらそうするよ、絶対。


結局、居酒屋ではなくファミリーレストランで食事をする事になった。

オーダーが届くまで退屈だった。

ヒカルは口を開いた。


「俺たちってどんな風に見えるんだろう?」

「せいぜい、教師と生徒だろうね」

「白川先生は先生っぽいもんね」












ANOTHER STORY(39) [長編]

「塔矢、よく考えろ。そんな事が公になったら

本当に碁が打てなくなる」

ヒカルは必死にアキラを説得しようとした。

だが、それが一層アキラを苛立たせた。


そんなに誰のために必死になっているんだ?

それともそんなにもボクに触れられるのが嫌なのか?

緒方さんとなら出来てもボクはダメなのか?


アキラはギュッと拳を握り締めると酷く低い声で言った。


「本気でボクを止める気があるのならもうキミは方法を知ってるんだろう?」


「・・・・・だから何度も言ってるじゃないか!おまえを破滅しかねないって」

「ボクのため?」

アキラはクッと小さく笑うと皮肉いっぱいに言った。


「違うだろう?キミは自分の保身の為だろう。

そんなにボクが嫌なのか?」

「誰もそんな事言ってないだろう!俺もおまえも碁を無くしたら

何が残るんだよ!!」

話が噛み合わない。

何て言えば分かるんだ。

ヒカルは考えた。


「キミは碁の為なら何だって出来るんだろう?

ならボクと寝るくらい大した事じゃないはずだ。

何ならその後食事をご馳走したっていいが」


「ふざけんな!!」

ヒカルは怒鳴りつけた。

あまりにもバカにした言い方に叫んでいた。


「どうして怒る?キミが緒方さんと寝たのはそういう理由だろう」


「・・・・・・!!」

ヒカル怒りに体を震わせた。


「一週間だけ待つ」

アキラはそれだけ言うとヒカルの前から立ち去った。


どうしてこんな事になったんだ?

あいつを俺から遠ざける為に・・・・緒方さんと。

そのせいで緒方さんを傷つけたのに。

結局俺のやった事は無駄だったのか?







ANOTHER STORY(38) [長編]

聞き違いか?

ボクが碁を止めると何故困るんだ?

「ボクが囲碁を止めようがキミには何の関係もないだろう。

何故、キミが困る事になるんだ?」

「俺はそんな事言っちゃいない!」

ヒカルは思わず出てしまった言葉を何とかもみ消そうと

必死に言い繕おうとしたが返ってそれがアキラには

不自然に思えた。

何か隠してる・・・。


「まあいい。ボクの引退を止められるのはキミだけなんだから」

アキラは戸惑う事もなくそう言った。

「俺にどうしろって言うんだ?」

「どうとでもとればいい」

「塔矢、お前らしくないやり方だな」

「何かを得るには何かを捨てなければならないのなら

ボクは何の躊躇もなく良心を捨てる。それくらい動作もない事だ」

「塔矢・・・・」

その時、ヒカルの頭に緒方の言葉が浮かんだ。

『狂わせたのはおまえだ』


塔矢を此処まで追い詰めたのも俺なのか?

俺はただ打ちたいだけなのに。

あいつの願いを叶えてやりたいだけなのに。


ヒカルはしばらく俯いて微動もしなかった。



「・・・・・本気で俺とやれば元のように碁が打てると

思っているのか?」

「ああ、少なくとも今のような無様な碁にはならないだろう」

「その事実が露見したらおまえだけじゃなく先生にも

迷惑がかかるその事を分かってて言ってるのか?」

「人が人を好きになるのに性別は関係ない!ボクは自分が間違っているとは

思わない」

「世間はそうは思わないぜ。ばれたら面白おかしく噂されて

おまえの名誉に傷がつく。おまえは俺とは違うんだからな」

「キミはそこまで分かっていてどうして緒方さんと・・・関係を持ったんだ?」

アキラは深く考えずにヒカルが行動していると思っていた。

今の話でも何もかも承知で行動した事になる。

何の為に?

そこまでしなければならない理由は何なんだ!?

アキラは理解できない怒りを覚えた。

自分の知らない何かがヒカルを動かしているのだとしたら

その何かが許せないと思った。







ANOTHER STORY(37) [長編]

「進藤・・・・」


なんて目で見るんだよ。

俺が苛めてるみたいじゃないか。


ヒカルは捨てられた子猫のような目で見つめるアキラを

見てそう思った。


「・・・・多分、ボクはキミの事が好きなんだと思う」

「はあ?」

「いや、自分でもよく分からない」

アキラは自分でも戸惑っているようだった。


「おまえは俺とやりたいのか?」

「だと思う」

「冗談言うな!俺はおまえだけはいやだ」

「だってキミは好きでもない相手とでもできるって言ったじゃないか?」

「だからっておまえとやる理由なんてない!」

「緒方先生とは何か理由があったのか?」

「いちいち言葉尻を拾うなよ」

「しかし、キミの言ってる事は矛盾だらけじゃないか?」

「本当におまえって面倒な奴だな」


アキラはしばらく黙りこくっていたが意を決したように

はっきりとした口調で驚くべき言葉を放った。


「ボクは碁を止めようと思う!」

「何だって!?」

ヒカルは耳を疑った。


「今のままじゃ碁の冒涜する事と同じだから」

「冒涜!?どういう意味だよ」


「碁に集中できないなんてボク自身が許せないんだ」

「スランプなんて誰もが経験する事だろう?」

「いや、スランプじゃない。キミの事が気になって他の事は

何も考えられない」

「碁バカなおまえが止めれるわけないだろう」

「好きだからこそ自分が許せないんだ。だからキミに打ち明けた」

「・・・・・・」

そんな事とっくに気づいてたさ。

だから緒方さんと関係を持ったのに・・・・。

おまえとは碁のライバルでいたいんだ。

何故分からない?


「おまえの碁に対する思いはそんなもんだったのか?」

「何とでも言えばいい。とにかくボクは決めたんだ」

アキラの決心は固いようだった。


「おまえに止められたら俺が困るんだ」

ヒカルは思わず口走ってしまった。


「えっ?」







ANOTHER STORY(36) [長編]

「・・・・・否定はしない」

アキラは同情するほど情けなそうな顔で言った。

てっきり怒ると思っていたヒカルは戸惑った。


正直すぎる、あまりにも。

自分とは違いすぎる。


「おまえならいくらでもいるだろう?」

「どういう意味だ?」

「やらせてくれる相手だよ」

にぶいなあという風にヒカルは言った。


「誰でもいいというわけじゃない!そんなの一人でするのと

同じだけだ」

「贅沢言うなよ」

「相手がボクの事を好きじゃないと意味が無い。

無論、ボクも相手を好きじゃないと」

「面倒な奴・・・・」


「キミは好きでもない相手とでも出来るのか?」

まっすぐな瞳でヒカルを見る。


「出来るさ。そんな事大した事じゃない」

ヒカルはそう答えるしかなかった。


出来ないと言えば緒方を好きだったと認める事になる。

緒方の事は確かに嫌いではない。

だが、意味が違う。

身体を重ねたい相手ではない。


「キミは誰かを好きになれない人なんだな」

アキラはヒカルを哀れむような目で言った。


「!!おまえに何が分かる!?」

ヒカルは思わずアキラの胸倉を掴みかかった。

「進藤?」

「どんなに好きだってどんなに離れたくなかっても

どうしようもない事はあるんだよ!!」


「キミは大切だった人と・・・・」

「なんでもない!今、言った事は忘れろ」

ヒカルは明らかに動揺していた。


「進藤・・・・」

「おまえの青春相談は沢山だ」






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