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ANOTHER STORY(49) [長編]

「君の碁が変わった気がするよ」

緒方は含みを持たせるように対局中に声をかけた。


陽動作戦のつもりかと

アキラは思った。

同時に大人気ないとも感じた。

棋戦でもないのに負けたくないのか。

それともヒカルに対する嫉妬からか?

まだ諦めてないのか?


無意識に拳に力が入った。


それを見て緒方の口元が緩む。


動揺に気付いて喜んでいる。

意地が悪い。


「深い意味はない。ただ、艶が出たと言うか・・・・、以前のお堅い碁とは

違う気がしたのでね」

可笑しそうに笑う。


そういう勘は鋭いな。

進藤と寝た事に気付いたのか。

アキラも口元を綻ばす。



進藤は誰にも譲るつもりはない!

やり方がどんなに卑怯だと思われようと

例え進藤がどんなに自分を嫌ったとしても

絶対に手放したりしない!!


ボクはおかしいのかもしれない。

でももう知ってしまった肌の温もりを

なかった事にはできないんだ。


「いつまでもボクが子供だと思わないで下さい」

仕掛けてきた石に対抗するように強気に打ち込む。


「そのようだな」

手に入れたいものを得た君はまさに怖いもの知らずだが

君は進藤の心の奥にいる存在の大きさに気付いていない。


緒方は終局すると無言で部屋を出て行った。


アキラは一人になると大きく息をついた。


ある意味ボクは碁を利用しているかもしれない。

進藤を繋ぎ止める為の手段として。


でももう迷いは捨てた。

彼が傍に居てくれるのなら

ボクはこの道をただ歩き続けるだけだ。






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