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ANOTHER STORY(50) [長編]

「帰るのか?」

アキラはいかにも不機嫌そうに言った。

「親がうるさいんだよ」

ヒカルは身支度を整えながら面倒そうに答える。


「ボクは事務的でそういうのは好きじゃない」

「これ以上俺に何かを求めるなよ」

ヒカルは寝てやってるのにこれ以上欲しがるなと

言いたげだった。


「キミは本当に好きでもない相手とでも出来るんだな」

アキラは寂しげな表情で言った。

こんな風に体を重ねても意味がない。

それは最初から分かっていた事だ。

それでも変わっていくかもしれない。

そう期待した。

そう願ってた。


「くだらねえ」

ヒカルは言い捨てると帰った。


アキラは両拳を握り締めて俯いた。

空しい。

ついさっききつく抱き合いながらお互い欲望の証を放ったのに

心が満たされない。


「ボクはバカだ・・・・」

自然と流れ落ちる涙。



ほんの少しでいい。

心を添ってくれたらどんなに幸せだろう。


今だから分かる。


「緒方さん、貴方もこんな思いをしたんですね?

ボクはようやく貴方の気持ちが分かった気がします」



俺はうまく嘘をつけているだろうか?

ヒカルは両手をジーンズのポケットに入れながら歩いていた。


想いが零れそうになるのを必死で止めるのは辛い。

『俺も同じ気持ちだから』

そう言ってしまいそうになる。

緒方さんの時とは違う。

全然違う。

あいつの切なそうな顔を見ていると自分も悲しくなる。




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