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ANOTHER STORY(47) [長編]

「・・・気が済んだか?」

ヒカルは意識を取り戻すとそう聞いた。

体はまだ痺れたままだった。


「それはキミの方だろう?意識が飛ぶくらいよかったみたいだし」

アキラは口元を綻ばせながら言った。


「うぬぼれんな!」

ヒカルは上体を起こして怒鳴った。

一瞬、アキラは驚いた顔をしたが

すぐに冷たい表情になった。


「まさかこれで済んだと思っていないだろうな」

「おまえ・・・!」


「ボクを繋ぎ止める方法が分かってるはずだ」

つまり今回の事で終わりではないと言う意味だと

ヒカルは気付いた。


「別に構わないだろう?キミのとって大した事じゃないんだろうし」


「・・・・・」


ヒカルは何も言わずに拳を握り締めた。


アキラをこんなにも変えてしまったのは自分なのだと

思い知らされた。

ではどうすればよかったんだ!?


俺はおまえとはただのライバルで居たかった。

こんな関係にはなりたくなかったんだ。

そんな事で俺達の碁を台無しにしたくなかった。



重い体を起こしてヒカルは身支度を整える。


「あまりボクを放っておかない方がいいよ、わかってると

思うけど」


その言葉にヒカルはアキラを睨んだ。


「怖いな。ボクとしては十分譲歩してるつもりなんだが」


「フン!」


ヒカルは乱暴に障子を閉めると帰った。



「キミは知らないだろう、ボクが今どんな気持ちでいるかなんて」


体は熱を放ってけだるい。

心は鋭い剣で突き刺されてるようで痛い。


「分かってた。それでも止められなかったんだ」

アキラは俯くと顔を両手で覆って泣いた。


愛しい人を無理やり手に入れた罪悪感と

心が手に入らないと思い知らされた絶望感。




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